PC3〜
ダウンチューブの下でシフトワイヤーが揺れていた。
外観に変化なし。
おそらくレバー内部で切れたのだろう。
ワイヤーって本当に切れるんだねぇ……。
他人事のように感心した。
PC3まではなんとかたどり着いた。
問題はここからである。
残り120km、山はないが多少のアップダウンはある。
11Tだけで走り切れるだろうか。
「あ、僕それ応急処置できますよ」
一緒に走っていた彼が言った。
そういえばワイヤーが切れた直後にも同じことを言っていた。
内容がイメージできなくて忘れていたが、一体どういうことだろう。
「変速はできないけど好きなギヤで固定できます。どこがいいですか」
そう言いながら結束バンドを取り出す。
えと、それじゃあ4枚目で……。
「んじゃ固定しまーす」
結束バンドでディレーラーを縛る。
作業完了。試走する。問題なし。
トラブルは解決した。
……いやいやいや。
何そのすご技。
めっちゃありがとうございます。
なんで結束バンド持ってるの。
感謝と疑問で混乱する。
話を聞くと、過去に他の人がやっていたのを見て覚えたらしい。
何そのラーニング能力。アルテマも使えるの。
青魔道士のおかげで大復活。
覚悟をPCのゴミ箱に捨てて出発した。
昨日走った道を逆方向に走る。
坂を上るときにペダルが重いが、11Tより遥かにマシ。
逆にこれ以上軽くすると平地が辛くなる。
昼になって気温が上がる。かなり暑い。
無理をせぬようこまめに休憩を挟む。
高架下で鳩のフンと一緒に寝る日がくるとは思わなかった。
人生はなんでも起こる。
中勢バイパス、鈴鹿サーキットを通過。
四日市を抜けて桑名に入る。
木曽三川を渡って愛知県イン。
ここまでくれば残りは本当に平坦だけだ。
陽が傾き始めた愛知を二人で走る。
夕暮れの有松宿が美しい。
国道1号を外れて旧東海道に乗る。
知立、刈谷、安城と走り、岡崎イン。
報恩寺前を通過。
川を渡って最後の角を曲がる。
そして。
20時5分、柳川瀬公園 到着。
BRM919名古屋600km
ゴールタイム39時間5分
600kmブルベを初めて時間内完走した。
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そんな訳でダラダラと書き連ねた挙句、最終回はおなじみの駆け足で書き終えたBRM919名古屋600km、結果は初の時間内完走、SRも初獲得で目標達成となりましたとさ。
(おわり)