デブとブルベとロングライド

デブが走ったブルベとロングライドの記録

BRM919名古屋600kmのこと-3

 

PC2〜長い夜

PCでは補給食を補充。
晩飯はすき家でとることにした。
胃が生きているうちは固形物を食べたい。


熊野から先は100km以上コンビニがない。
それに峠が多く、道の駅などの施設は少ない。
長い夜に備えるべくしっかり休憩した。

 

すき家を出ると、PC2の方向から一人の自転車乗りが現れた。
昼間に道の駅で出会ったブルベ参加者だった。
出会った時点で暑さによる消耗を訴えていた彼は、仮眠をはさみながら熊野まで走ってきたとのことだった。
眠気は今も継続しているらしい。
表情に疲労が滲んでいた。

昼の暑さに加え峠越えの疲れが出たのかもしれない。
ここから先はこれまで以上の難所が続く。
一人では危ないので、一緒に走ることにした。

獅子岩の前を通り過ぎる。(暗くて見えないけど)
海沿いの国道から山側に向かって曲がると、わずかにあった街の明かりはあっという間になくなった。

静かな道を一時間ほど走る。
前方に大きなトンネルが見えてきた。
風伝トンネルだ。

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トンネルの手前に小さな脇道があった。
これから走る林道の入り口だ。

地図を見る。
そんなに長い林道ではなさそうだ。
が、峠の難易度は走ってみるまでわからない。

すき家の牛丼はまだ消化できていない。
エネルギー不足にならぬよう、自販機でジュースを買って飲み干す。
呼吸を整え、いざアタック。


風伝峠は地獄だった。

路面を覆う落ち葉、小枝、落石。
ガードレールや街灯はもちろんない。
なぜ試走してこの道でいいと思ったのか。
コース考案者を拷問しようと思った。

細心の注意を払いながら林道を上る。
しばらく進むと、あった。
妖怪ポスト……ではなくスタンプ台。

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通過チェックのためブルベカードにスタンプを押す。
ごりごりに失敗。
再トライ。
もちろん悪化した。

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これで認定がとれなかったらどうしよう。
一瞬悩んだが、修正できないので諦めた。

通過チェックを終えてしばらく走ると、道は下りに転じた。
相変わらず路面は荒れている。
注意しながら走ったが、大きな石を踏んでしまった。
まさかパンク!? ……無事なようだった。ほっ。

いつまた何かを踏んで転倒してもおかしくない。
転倒時に相手を巻き込まぬよう少し距離を取る。

路面を凝視。慎重に下り続ける。目バッキバキ。
林道が終わり、大通りに合流。まだまだ下る。
上った量より下ってる気がする。
だんだん傾斜が緩くなってきた。
そして。
長い長いダウンヒルがようやく終わった。

し、しんどかった……。

生きて峠を抜けた喜びを分かち合うため、後ろを振り返る。


そこに彼はいなかった。

(つづく)