3日目 地獄
雨は止んでいた。
午後から降る予報だったが、それでも嬉しかった。
出発ぐらい濡れずにいきたい。
母屋で朝食を平らげ精算を済ませると、マスターがカメラを持ってきた。
旅人ノートに保存するらしい。
宿をバックに記念撮影した。
いつか再び訪れて、今日の自分の姿を見に来たいと思った。
宿を出てしばらく走ると、謎のモニュメントが登場した。
うーん空模様。
手塩までもつかこれ。
とにかく先を急ぐ。
もたなかった。あべし。
道の駅に避難した。
カッパを脱ぎ捨て食堂へ駆け込む。
しじみラーメンとヒラメ丼を食べた。
雨は止まない。
濡れたカッパをもう一度着た。つらい。
少し走ると、オロロンライン(天塩〜稚内)前の最後のコンビニが現れた。
ここから先は何もない60kmの一本道。
雨は本降り。風もある。
試される大地。
覚悟とレッドブルをキメた。
地獄だった。
忘れていたが、平坦は意外と辛いのだ。
踏むのをやめるとすぐに失速する。
まして今日は向かい風。
ハムストリングスは当然死んだ。
さらに。
バイク乗りたちが「ヤエー」(頭上でピースを振るような仕草)をしてくれるのだが、返事で片手を上げるたびにバランスが崩れ、次第にストレスになっていった。
またライダーが頭上でピースを振る。
その指ひきちぎるぞ!
試される大地。僕は闇堕ちした。
なんとか稚内にたどり着いた。
少し走って野寒布岬に立ち寄り、休憩がてら宿をさがす。
た、高けぇ!
ハイシーズンの稚内を舐めていた。
ホテルはどこもいっぱいで、しかも高かった。
色々探すも皆で松山千春を熱唱する狂気のゲストハウスぐらいしか空いていない。
僕は途方に暮れた。
(つづく)