ある夜、光るおっさんとすれ違った。
ライト。反射ベスト。ロードバイク。
おっさんはあっという間に闇に消えていった。
後日、漫画でブルベを知った。
あのおっさんはランドヌールだったのか。
当然のようにブルベに興味を持った。
エントリーサイトにアクセス。
今季の中部地方のブルベは残り一件。
初ブルベが自動的に決まった。
10月末の早朝、道の駅からスタートした。
いきなり峠を上らされた。
びっくりした。
その後も上りばかりが続いた。
あまりにキツくて自転車を押し歩いた。
道の駅で魚の塩焼きをかじった。
塩は一粒残らずなめた。
それでも足の痙攣はおさまらなかった。
辛かった。
何が楽しいのかわからなかった。
東栄町あたりからコースがようやく下りに転じた。
ようやく快適になると喜んだが違った。
10月末の山は震えるほど寒かった。
でも、着替えることはできなかった。
勝手にしがみついた集団の最後尾。
はぐれたらゴールできない確信があった。
最後の峠には街灯がひとつもなかった。
暗くて怖かったが星は綺麗だった。
恐怖と感動で情緒がおかしくなりそうだった。
最後の峠を上った。
時間ギリギリ。
必死にペダルを踏んだ。
全速力で下ってゴールに転がり込む。
13時時間25分。
初めてのブルベを完走した。
帰りに銭湯に寄った。
靴を脱ぎたいがしゃがめなかった。
腰から下がすべて筋肉痛だった。
湯船では寝落ちして溺れかけた。
ブルベなんか二度と出ない。
心からそう思った。
...
初めてブルベに参加した時の話。
二度と参加しないと思ったのに、今ではどっぷり。
似たような人、きっといっぱい居ると思うなぁ笑
(おわり)